介護サービスの品質向上と従事者の働きがい向上を目指す ―ビーコンを活用して介護老人保健施設における作業量の定量化に挑戦―

2026-03-06

Yasu Eyecatch

ポイント

  • 介護サービスの品質向上のカギは「働きがい」の向上
    施設利用者の満足度向上や地域からの信頼獲得には、介護スタッフの「働きがい」を高めることが重要です。
    そのため、妥当性(透明性・公平性・納得性)のある人事評価や適切なアドバイスを通じ、教育効果や生産性の向上、エンゲージメント向上を目指します。
  • ビーコンとスマートフォンを活用し、業務状況の可視化に挑戦
    フロア内に設置したビーコン(Bluetooth電波の発信機)と、スタッフが携帯するスマートフォン(Bluetooth電波の受信器として活用)を連携させ、移動や滞在に関するデータを取得。
    可視化・分析を通じて、業務ごとの負荷の定量化や、スタッフごとの業務状況の把握を行います。
  • 実施エリアを拡大し、新たな介護DXへの挑戦を推進
    3か月間の実証実験で良好な結果
    が得られたため、現在は施設内での導入拡大を検討中。
    サービス品質の向上と働きがい向上の実現に向け、取得データの活用をさらに深めていきます。

導入事例の概要

介護業界の多くの施設では、介護従事者の確保や定着が大きな課題となっています。

各施設がさまざまな取り組みを進める中、滋賀県の介護老人保健施設「野洲すみれ苑」様では、ケアやサポートといった介護業務の定量化による「科学的介護」の推進サービス品質向上に挑戦しています。
JR西日本は、ビーコンを活用した移動データの取得やデータ分析、可視化業務に協力しています。

フロア内の居室、浴室、共用スペースなどにビーコンを設置し、スタッフが携帯するスマートフォンとの接触データを取得。
蓄積したデータを分析することで、業務状況の確認やスタッフ間の比較など、業務の可視化が可能になります。

また、スタッフの働きがい向上に向け、可視化レポートを活用したきめ細やかな従業員フォローや、公平で納得感のある人事評価の実現も目指しています。

導入企業の概要

  • 導入企業(施設)名:医療法人社団 菫会 介護老人保健施設 野洲すみれ苑
  • 所在地:滋賀県野洲市
  • 業務内容:
    介護老人保健施設、ショートステイ、デイケア、訪問リハビリテーション、医療型短期入所、通所型サービスC
課題と解決策の概要

課題

野洲すみれ苑様では、科学的介護の推進を通じた介護サービスの品質向上に取り組みながら、地域に選択され信頼される施設を目指しています。

その実現には、介護スタッフの実務遂行能力の向上働きがい向上が不可欠です。そのためには、業務状況を正確に把握し、適切なアドバイスや納得感のある人事評価につなげることが重要となります。

しかし、介護業務は日々の状況によって変化するため、業務量や業務状況を定量的に把握することが難しいという課題がありました。

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課題認識から解決までの流れ

このような状況の中、野洲すみれ宛様は、JR西日本がエスコンフィールドHOKKAIDOや大学などで進めていた、ビーコンやセンサーを活用した業務改善施策に関心をお持ちいただきました。
そこで、JR西日本社員との複数回の業務ヒアリングやディスカッションを経て、実証実験も兼ねた導入を決定しました。

居室や浴室、共用スペース、事務スペースなどの業務エリアにビーコンを設置し、スタッフが携帯するスマートフォンで電波を受信。
移動に応じて各所の電波を取得し、蓄積されたデータを分析することで、滞在場所や滞在時間の可視化が可能になります。

例えば、「5名の入居者の入浴介助にかかる時間」や「排泄介助に赴いた回数」といった観点から業務状況を確認し、スタッフ間の比較も可能になります。
さらに過去データとの比較により、業務習熟状況の把握もでき、教育体制の充実を通じてサービス品質向上につながることが期待されます。

JR西日本のデータ分析チームが取得データを確認し、可視化作業を行ったうえでレポートを作成。
これにより、管理者の目が行き届きにくい業務や時間帯の状況把握が可能となり、スタッフの業務実態や成長、日々の頑張りをよりきめ細かく把握できるようになりました。

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導入後の効果・メリット

本取り組みにより、同じ担当業務であっても、スタッフごとに作業時間や行動状況に違いがあることが明らかになりました。

業務の進め方に改善の余地がある場合には必要な教育や指導を行い、取得データから見える業務の工夫や努力については管理者が把握してフィードバックしています。

現在は一部フロアでの試行段階ですが、今後は導入エリアの拡大を進め、働きがい向上と科学的介護の推進の両立を目指します。

顧客の声

野洲すみれ苑 リハビリテーション科 科長 作業療法士 加賀山 俊平さまのコメント

医療・介護業界において人材不足が叫ばれている中、ロボットやICT化の推進によって日々の業務の簡略化などは進んでいますが、実際に働く「ヒト」の能力の最大化については、充分に検討されているとは言えません。
その中で、医療・介護業界は交代勤務があるがゆえに、管理者が部下の業務実態を適切に把握することが難しい状況にあります。

そういった中でも、今いる職員の力をどれだけ最大化できるかを考えたとき、まずは職員がどう動いているのか、現状を把握する必要を感じました。介護業務は、場所に紐づいてケアが実施されている特徴もあり、ビーコンの導入によって見えていない実態がたくさん見えるようになりました。

今後は得られたデータをしっかりと活かし、利用者軸でのデータからケアの標準化を図り、生産性向上もさることながら、介護の品質向上につながる可能性が大きいと考えています。

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