【機械化を実現!】鉄道レールの腐食対策

2025-09-08

ついに亜鉛・アルミニウム擬合金溶射技術を用いた鉄道レール防食加工を機械化しました!

Kikaika

outline製品概要

鉄道レールの腐食対策に用いる「アルミ溶射防食加工」とは!?

 アルミ溶射防食加工とは、亜鉛・アルミニウム擬合金溶射技術を用いたレール防食加工のことです。この技術は、「亜鉛」と「アルミニウム」を溶融し、完全に固溶しない状態で形成される合金を、ブラスト処理を施した鉄道レールに溶射します。当社では、アルミ溶射防食加工を「レール母材の腐食を防止する技術」として鉄道レールの防食工法に活用しています。

なぜ鉄道レール腐食はなぜ発生するのか・・・

 鉄道レールの腐食は、酸素と水分が大気中に存在する限りどんな箇所でも起こり得ます。特に、湿潤した環境の「トンネル内」、「踏切内」の湿潤下環境や、塩分の影響を受ける「沿岸部」で敷設されている鉄道レールは、レール底部に局所的に著しい腐食が発生し易く、レール折損の原因になる可能性があります。

鉄道レール腐食に対する対策

 レール底部の腐食は、定期的に超音波探傷検査や外観検査(目視や触手)を実施していても把握が難しい箇所があり、その箇所に敷設するレールに対し「テープ類」や「塗装」などの有機材料で被覆する対策が取られてきました。
 当社では、特に腐食の把握が困難な踏切区間に対し、テープ工法等より耐久性の高い「アルミ溶射防食加工」を採用し、レール頭部を除く「腹部両面」「底部両上面」「底部下面」に施工しています。防食加工したレールは溶射被膜が形成されるため、腐食環境であっても電気化学的な作用によりレール母材の防食効果を発揮します。また、仮に溶射被膜が部分的に剥がれた場合でも、亜鉛・アルミニウム擬合金が溶出し、レール母材の腐食防止が期待できます。
 なお、このアルミ溶射防食加工法は、JR西日本等が所有する特許技術であり、鉄道トンネル内の腐食環境下にあるレールに対し、14年以上の長期にわたり防食効果を維持している実績があります。

画像

アルミ溶射防食加工の機械化を実現

 これまでは、アルミ溶射防食加工【ブラスト処理→アーク溶射→封孔処理】の全ての作業を人力で行っていました。この作業は、重労働かつ長時間を要する作業で、粉塵・騒音の制約条件から保護具の着用が必須で、特に暑い環境下では体力的にも厳しく、健康被害や労災のリスクがありました。
 そこで、当社では作業環境の改善と生産性の向上を目指し、2022年度からアルミ溶射防食加工法の機械化開発に取り組み、この度アルミ溶射防食加工の機械化を実現しました。

特徴 ・仕様FEATURES

機械化した作業

 アルミ溶射防食加工には、「ブラスト処理」「アーク溶射」「封孔処理」の3つの作業工程があります。この中で、「ブラスト処理」と「アーク溶射」の作業工程を機械化しました。機械化することで、生産性の向上、技術者の技量による品質のばらつきがなくなり、安定した溶射施工が可能となりました。

機械化

ブラスト処理の機械化

 ブラスト処理は、レール表面に研掃材を高圧のエアーで噴射することで、表面の汚れや錆を除去し、アーク溶射に適した粗さを持つ表面を形成する方法です。この作業を人力で行うと、研掃材やレール表面の錆等が粉塵となり空気中に飛散します。粉塵と騒音が発生するため、作業空間をシートで囲う環境整備等の対策や、作業員の防護服等の着用が必要でした。
 開発したブラスト機は、作業空間がボックス内に密閉され、噴射した研掃材は集塵装置により回収・分別、リサイクルされ、人力作業でのリスク対策は不要です。また、ブラスト処理作業は、専用のレール移動機により、2分/mで連続23m/本の処理を行います。必要とする表面粗さは、機械化することで基準値を上回る均一な品質が確保され、次の作業に進むことができます。

ブラスト処理機

アーク溶射の機械化

 アーク溶射は、2つの金属材料に直流アーク放電を発生させ、その放電エネルギーを溶融し、溶けた金属を圧縮空気で噴き付け、対象物の表面をコーティングする方法です。 当社では、それぞれ一定の比率を標準とした「亜鉛線材」「アルミ線材」を金属材料として、電気アーク溶射機を用いてアーク溶射を行います。この人力作業では、レール形状が異なることから均一した溶射膜厚の確保は技術者の技量によるところが多く、アーク溶射のための防護服は必須で、長時間に及ぶ重労働による労災のリスクがありました。
 今回、このアーク溶射を行う「アルミ溶射機(溶射ロボット)」は、1mごとにレールの「腹部」および「底部」を自動で約4~5分/mで全周溶射します。該当箇所の溶射が完了すると、レール移動機にレールを1m前進させる信号を送り、移動後自動で再度溶射を行います。そのため、施工数量(m)を任意で指定し、自動で溶射施工をすることが可能で、均一な膜厚が得られ安定した溶射品質が確保できます。なお、人力で行っていた溶射作業を機械化したことで、労災リスクの低減を図ることができます。

アルミ溶射機

機械化したことによる効果

 ご紹介した通り「ブラスト処理」「アーク溶射」の作業を機械化したことで、作業速度向上による生産性の向上のみならず、技術者の技量や経験値に左右されない、安定した溶射品質を確保することができました。
 また、各工程で2名程度の要員が必要であった人力作業は、機械化作業では各工程1名のオペレータで作業可能となり、省人化を図ることができました。当社実績では、約50%の工期短縮および約70%の省人効果を発揮することができました。
 なお、このアルミ溶射防食加工の機械類は可搬出来る構造としており、一定の条件を満たせれば、当社外での作業ヤードにおいても施工可能です。そのため、事業者さまのニーズに合わせた機械施工が可能となっています。

日本鉄道施設協会「第13回鉄道施設技術発表会」で発表

 2025年7月24日(木)にホテルメトロポリタン(東京・池袋)で行われた、一般財団法人 日本鉄道施設協会主催第13回鉄道施設技術発表会で、「アルミ溶射防食加工の機械化」について発表を行いました。
 この発表会で優秀賞を受賞し、当社「鉄道レール腐食対策への取り組み」の発表を通じて、より多くの鉄道事業者様に知って頂ける機会を得ました。

受賞

ぜひ「鉄道レールの防食対策」についてお気軽にお問い合わせください。

Contact
お問合せ

技術情報やパートナー募集に関する詳細はこちらより
お問い合わせください。

お問い合わせフォーム
お問い合わせフォーム