outline製品概要
製品のポイント
2Dセンサによりホームと線路の境界部にスクリーン状の検知エリアを構成し、ここを通過する転落挙動を検知すると、事象発生を警告灯や監視画面でリアルタイムに駅務室等へ通知します。
多数の転落シミュレーションに基づき考案したセンシング角度と独自開発した判定アルゴリズムで高精度に転落事象を検知することができます。
特徴 ・仕様FEATURES
特徴
• 本システムでは、ホーム上屋に設置した2D測域センサの検知信号をもとに旅客等の転落を判定します。2Dセンサは不可視のレーザー光をホーム端部の上屋から線路面に向かって照射しており、ホーム端と線路の境界近傍にて列車進行方向に対しスクリーン状に検知エリアを構成します。センサ自体は自身が照射する不可視レーザー光の反射光を受光することにより精度高く物体を検出することができます。しかしその反面、その検出物が人によるものなのか、鳥や小動物、ゴミ袋の飛来といった検知対象外のものであるかを判別することはできません。
そのため、センサが検知した物体のサイズ、検知箇所や動作軌跡検知するタイミングなどといった複数の要素から、実際の旅客転落であったかどうかをPLC制御により総合的に判定することで、誤検知リスクを最小限に抑える仕組みを構築しました。
システムにより転落事象を検知した際は、ホームや駅務室等に設置する警告灯や監視PCの画面表示で事象発生を通知します。また、弊社の駅設備総合監視システム(RC70シリーズ)と連携することで、転落検知の発報と同時に検知した箇所の監視カメラ映像を同じ画面で確認できる機能も実現できます。
さらに新たな取り組みとして、転落検知と同時に非常報知灯へ信号を連携する機能も開発しています。これは人によるSOSボタン押下を必要とせず、列車の運転士へ非常事態発生を知らせることを可能としたもので、システムが自動で列車抑止を行うというものです。

図1. システム概要図

図2. センサ設置箇所
仕様
- 精度向上の取組み
- 当システムで可能な限り多くの転落挙動を検知するためには、転落挙動が2Dセンサのセンシングラインに沿うような軌跡となることが必要となります。そこで、駅のホームを模擬した環境で転落挙動のシミュレーションを重ねることで、様々な転落挙動の軌跡を分析し、最適なセンサ設置角度を検討しました。
- 一方で、鳥やゴミ袋がホームに飛来してきた、小動物が線路内を走り抜けた、といった転落以外の挙動による誤検知は可能な限り無くさなくてはなりません。そこで、実際の駅ホームに当システムを整備し、センサの検知ログを収集することで転落以外の検知があった際の検知状況を確認し、センサの各種設定(検知エリアの位置、検知対象寸法の設定、転落と判定する検知時素やタイミングの設定)について試行錯誤を重ね、最適な設定や判定アルゴリズムを構築しました。

図3. 転落シミュレーション試験環境

図4. 転落軌跡とセンシング角度の分析
- 転落検知以外の2Dセンサ活用例
- 2D測域センサによる「指定した任意の検知エリアにおいて物や人を検出する」という機能を応用したホーム端接近検知機能や戸挟み検知機能も開発を進めています。
- ホーム端接近検知機能について
- 2Dセンサをホーム端部で鉛直方向に設置することで、点字ブロックを越えて線路側へ近づく旅客を検知することを目的とした機能です。ホーム端部へ近づくお客様を検知した際に注意喚起音声を鳴動するシステムなどに応用できます。
さらに、列車在線検知センサや列車ドア開閉検知センサと組み合わせたシステムを構築することで、列車ドアを閉めるタイミングや発車時に列車に近づくお客様を検知し、運転士や車掌へ知らせる信号と連携するような機能も実現できます。。これらは中・長編成のワンマン運転実現を安全面で支援する機能としてもご活用頂けるシステムを目指しています。

図5. ホーム端接近検知機能(非在線時)

図6. ホーム端接近検知機能(在線時)
ユースケース、効果Use Cases & Effects
ユースケース(活用事例)
- 2020年度よりJR大阪環状線 福島駅にて試行運用実施中(非常報知灯連動含む)
- 2023年度より近畿エリアの複数駅で本運用開始。
※以降、JR西日本管内の各駅にて整備拡大中。
開発経緯
昨今の鉄道事業では、駅ホームにおける列車とお客様の接触事故やホームからの転落事故を防止する観点から、ホーム上の安全設備の整備拡大が急務とされています。このような情勢の中、ホーム安全設備において最も効果を発揮するものが可動式ホーム柵です。
しかし、ホーム柵を整備するには、大規模なホーム補強工事が必要になるなど費用面での課題があるだけでなく、列車ドアの数や位置が統一されていないこと、列車との連動システムの整備が必要であるなど、整備拡大を進めるに当たっての技術的課題も多いことが実態です。
一方で、近年ではカメラ画像の解析による転落検知など、ホーム柵以外のホーム安全設備も開発・整備が進められています。 そして今回ご紹介するホーム安全スクリーンは、ホーム柵以外のホーム安全設備の選択肢のひとつとして、コストパフォーマンスの優れた柔軟性の高いホーム安全設備を目指して開発を進めてきました。
導入サポート
弊社では鉄道業界向けの転落検知・ホーム端部接近検知だけでなく、鉄道以外のフィールドでも活用できるシステム開発にも注力しています。多種多様なセンサ技術を応用し人や車両を検知することで様々な場面で安全性向上に寄与するシステムを開発、ご提案させて頂きます。小規模な実証実験からでも結構です。お気軽にお問合せ下さい。
【特許取得済】 特開2020-032861