概要 Ouitline
様々な機械のメンテナンスにおいて、ボルトやビス等の締結作業は欠かせない基本作業です。一方で、締付トルクのばらつきや記録管理の煩雑さは、品質不良や手戻りにつながる要因となり、「時間短縮」と「品質向上」は多くの現場に共通する明確な課題と言えます。
JR西日本テクノスでは、過去に発生した不具合事象をもとに品質確保のポイントを整理するとともに、作業効率向上を両立できる仕組みとして「トルク管理システム」を考案しました。
本記事では、システム開発に至った経緯と、現場課題をどのように解決したのかをご紹介します。
業務内容のご紹介 Introduction of Business Activities
JR西日本テクノスは、JR西日本グループにおいて鉄道車両に関わる設計、製造、メンテナンス、改造などを担い、鉄道の安全・安定輸送を支えています。

今回ご紹介するトルク管理システムは、空調装置検修における空調カバーの着脱作業を対象に開発したものです。ボルト締結を伴う作業であれば、鉄道分野に限らず幅広い現場への展開が可能な仕組みとなっています。
課題認識(システム開発までの経緯) Development History
鉄道車両においては、高速で走行することから部品の落失はお客様の死傷に繋がる重大事象であり、特に屋根上から部品が飛来するリスクは危険な事から、空調装置カバーボルトのトルク管理について課題抽出を行いました。
その結果、以下の3点が課題として抽出されました。

① 後確認時の2度締めによりオーバートルクしてしまう
作業者が締付け後にトルクをかけた後、ボルト締結がしっかり行われているか後確認するために、更にトルクレンチで締付け確認をおこなっておりました、その結果、規定トルク以上のトルク値がかかりオーバートルクになっている可能性がありました。
② トルク設定値の読み間違いや勘違いによるヒューマンエラー
作業者が都度トルク値を確認・設定するルールになっており、読み間違いや思い込みによる設定ミスを完全に防ぐことが難しい状況でした。
③ 作業記録の追跡が困難でトレーサビリティが不十分
帳票による記録管理では、作業日時・作業者・締付結果を後から正確に追跡することが難しく、不具合発生時の原因究明に時間を要していました。
また、生産性の面でも、
■ 帳票記録に手間がかかる
■ 不具合傾向や作業ばらつきを管理しづらい
といった課題が顕在化しており、品質・効率の両面で改善が必要な状況でした。

本システムのご紹介 Introduction of the System
これらの課題に対し、「人による注意や確認に依存する管理」から、「仕組みによって防止する管理」への転換を目指し、以下のシステムを開発しましたのでご紹介します。

① トルクレンチのIoT連携
Bluetooth機能を搭載したトルクレンチを作業用PCと連携させ、締付け箇所と締付トルクを自動的に記録・保存する仕組みを構築しました。これにより後確認が不要となり、オーバートルクしてしまうリスクが回避されました。また、自動記録によって記録漏れや転記ミスを防止するとともに、作業結果の信頼性向上と記録作業の省力化も実現しています
② 上限・下限値設定による締付結果の自動判定、自動記録(ヒューマンエラー防止)
締付トルクに上限・下限値を設定し、締付結果をシステムが自動で判定することで、過少・過大トルクをその場で検知可能としました。これにより、作業者の誤認識や使用工具の誤扱いを防止し、トルク値の異常を防止しています。
③ 2度締め防止機能
締結したボルトを再度トルクレンチで15度以上締付けるとセンサーにより警告が表示されます。この機能により誤って同じボルトを2回締付けるリスクを回避できます。
④ 作業履歴の自動保存によるトレーサビリティ確立
作業日時、作業者、測定結果を自動的に保存・管理することで、過去実績の検索や不具合発生時の原因追跡を容易にしました。品質向上だけでなく、作業傾向の把握や改善活動への活用も可能となっています。
これらの取組により、締付ミスの未然防止と管理負荷の低減を同時に実現するトルク管理システムを構築しました。
システムの使用方法 How to Use
本システムにはハードウェアとしまして作業用タブレット、管理用パソコン、データ移行用のUSBメモリ、Bluetooth機能の搭載されたトルクレンチが必要です。

本システムは以下のとおりです。
① タブレットで「トルク管理システム」を起動し、「締付作業」を選択します。作業開始にあたり、作業日時・作業者名・対象作業の部位を入力します。

② 締付けが必要な箇所が、指定された順番で画面に表示されます。
あわせて、締付け対象となる箇所数も表示されます。
③ 各箇所のトルク値について、上限値・下限値を設定します。締付け時には、無線付きトルクレンチからトルク値データが自動で取得され、設定した範囲内に収まっているかをシステムが自動判定します。
④ 画面の指示に従い、表示された順番どおりに締付け作業を行います。すべての締付け対象数が満たされると、作業完了となります

本記事では、締付作業におけるトルク管理について、ソフトウェアを活用した管理システムをご紹介しました。本システムは、2025年度の鉄道技術展にも出展し、現場課題に即した実用的な仕組みとして高い評価をいただいています。今後も、現場で培った知見を活かし、品質向上と生産性向上を両立するシステム構築を通じて、社員の働きがい向上に努めてまいります。

