自動改札機の点検回数30%減と故障発生数20%減を同時に実現「機械故障予測AI」

2025-07-31

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ポイント

  • JR西日本が自動改札機用に開発した「機械故障予測AI」
    自社開発の故障予測AIを、JR西日本管内約2,000台の自動改札機に導入。動作ログとセンサデータ分析で設備状態を予測し、最適な保守タイミングを実現。
  • 年間で約14,000回の点検、約4,000回の故障対応を減らしたい
  • ○ 自動改札機1台あたり、定期点検は年7回、故障発生による緊急呼び出しは年2回発生。点検回数を削減しながら、故障発生件数を低減させたいという2つの課題を同時解決する必要があった。
  • 点検回数を約30%、故障発生件数を約20%削減
  • ○ 神戸エリアでの試行を経て全線展開した結果、総点検回数が約3割減、故障発生件数も約2割減を達成。少ない点検で故障も減らすという目標を両立。
  • ● さまざまな業態の機械故障予測に利用可能
  • ○ この予知保全技術は製造業の生産ラインなど他産業にも応用可能。東洋紡の製造ラインでは、故障による停止時間が累計約10時間短縮された実績あり。
課題と解決策の概要

JR西日本では、在来線管内の約2,000台の改札機に対して、1台あたり年7回の定期検査を実施していました。しかし、1台あたり年2回の故障とオンコール対応が発生。年間で換算すると約14,000回の定期検査と約4,000回の緊急修理が発生し、大きな負担となっていたのです。

この課題に対し、JR西日本は自動改札機の動作ログデータとセンサデータを分析し、データ可視化と故障予測AIモデルを構築。稼働データと故障履歴データの関連性から故障確率の高い機器を優先的に表示するアプリケーションを開発しました。

週に一度アップロードされる稼働データから、クラウド上で推論を実施し、故障確率の高い機器とその根拠を明示します。故障確率の高い順に機器が表示され、保守担当者はどの機械を点検・修理すればよいかが一目で判断可能に。神戸エリアでの試行の結果、点検回数を約3割減らしながら、故障件数を約2割削減するという、相反する目標の両立に成功。JR西日本ではすべての自動改札機、券売機、精算機に機械故障予測AIを導入し、予知保全による保守業務効率化を実現しています。

課題:点検回数・故障発生件数を低減したい

JR西日本では、 在来線管内にあ る自動改札機約2,000台に対し、1台あたり年7回の定期点検を実施していましたが 、1台あたり年2回の故障(オンコール)が発生。 年間で約14,000回におよぶ点検回数と、 約4,000回の故障発生件数 の低減を図りたいという課題がありました。

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課題解決手法:CBM(Condition Based Maintenance)による課題解決

・点検回数を減らしながら故障発生件数も減らすという課題を解決するため、券詰まり回数や切符搬送速度等の稼働データと、故障履歴データの関連性を機械学習することで、AIモデルを構築しました。

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構築したAIモデルのイメージ

・その結果、自動改札機の稼働データを週に1回アップロードし、クラウド上で推論を実行すると、故障確率が高い順に対象を機器が表示するアプリケーションを開発 。保守担当者は、故障確率が高い状態の機器から優先的に保守を実施することが可能になりました 。

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JR西日本の自動改札機故障予測AIのアプリケーション画面

多くのAIモデルは基本的にブラックボックスであり、推論結果の根拠が分からない ことも少なくありません 。 弊社では 機械学習の予測結果の解釈をする機能を独自に開発しました。個々の機器ごとに故障確率を押し上げた要因特定ができ、適切な保守が可能となります。

導入効果と実績:自動改札機の点検回数約3割減、故障件数は約2割減

2020年6月より神戸エリアにて試行し、試行エリアとエリア外の自動改札機1台あたりの点検回数と故障発生件数を比較した結果は以下の通りです。
● 総点検回数 約3割減
● 故障発生件数 約2割減
検証結果より、故障予測AIを活用すると 少ない点検回数で、故障件数も低減できることが実証できたため、JR西日本管内へ展開を実施しました。

今後の展望:鉄道業以外の製造業へのサービス展開

本件で得られた当社のCBMの技術は、大量のデータを用いた異常検知・原因予測に適用できます。 特に製造業の製造ラインへの応用が期待できることから、2024年4月より、東洋紡株式会社様の製造 ラインの一部におい て、故障予測 技術を導入いただきました 。 AI未 導入時期と 比べて、故障によって生じる 製造ライン のタイムロスが従来の方法と比べて、累計で約10時間短くなり、生産ロスと作業者負荷がともに低減されたの評価をいただきました 。
JR西日本グループとしましても、これまで以上に、鉄道業界の枠を超えた 、 課題解決に繋げていきたいと考えております。

現場の声

JR西日本 松田氏
故障予測に応じた点検を実施することにより、点検回数および故障回数が減少し、現場の保守業務が効率的になり、弊社をご利用頂くお客様にの満足度向上にも繋がると感じている。

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