鉄道事業者にとって、鉄道車両のリニューアル工事は、車内設備の更新や、世間が求める鉄道サービスを提供するために必要です。
本記事では、そんな鉄道車両のリニューアル工事に携わる人たちがどのような思いで取り組んでいるかを、山陽電気鉄道3000系(3050系)のリニューアル工事を参考にしながら紹介します。
※本記事はJR西日本テクノスが監修しています。
目次
1.はじめに
(1)山陽電気鉄道3000系のリニューアル工事とは
山陽電気鉄道3000系は1964年に導入を開始した通勤型電車で、現在までに133両が導入されています。
とりわけ、初期に導入された鉄道車両は、製造から約60年の年月が経過しています。
そんな山陽電気鉄道3000系のうち3050系アルミ編成車両のリニューアル工事を、2022年度の夏からJR西日本テクノスが施工させていただいています。
※山陽電気鉄道3000系のリニューアル工事については、「【すべて見せます】山陽電気鉄道3000系リニューアル工事」記事でも詳しく解説しています。
(2)鉄道車両のリニューアル工事とは
鉄道車両のリニューアル工事は、車内設備の更新や、世の中が求める鉄道サービスを提供するために必要です。
鉄道車両のリニューアル工事の流れは以下のような流れになります。
- お客様の要望・集約
- 仕様検討およびお客様への提案
- 設計
- 工事施工(艤装)
- 竣工
2.車両設計室について
JR西日本テクノスの設計室では、約60人のメンバーが在籍し、過去の実績などによりプロジェクトの最適なメンバーを選出しています。
JR西日本の鉄道車両を中心に、新製車両機器および改造・リニューアル車両の設計全般に携わっており、JR西日本の車両だけでなく山陽電気鉄道や近江鉄道などの多くの鉄道事業者のリニューアル工事に携わらせていただいています。
その中でも車両設計室は、通常の艤装設計はもちろん現在第一線で活躍している鉄道車両をベースとして改造・リニューアルする設計に長けており、これは一般的な鉄道車両を製造するメーカーではあまり経験することができない業務となっています。
3.山陽電気鉄道3000系(3050系)リニューアル工事_設計者インタビュー
(1)メンバー紹介
鉄道車両の設計は『安全』であることが大前提です。
ご乗車されるお客様、運行される事業者の方々、定期検査やリニューアルに携わる作業者に、より安全な車両を提供できるように改造することを大切にしています。
➀車両設計室 春口社員
春口社員
★経歴
- テクノス入社年月:2015年1月
- 設計室 配属:2015年1月~
➁車両設計室 清水社員
清水社員
★経歴
- テクノス入社年月:2017年4月
- 設計室 配属:2019年6月~
③車両設計室 西川社員
西川社員
★経歴
- テクノス入社年月:2013年4月
- 設計室 配属:2018年6月~
(2)山陽電気鉄道3000系(3050系)車両設計にて苦労した点、工夫した点は?
西川社員:
まずリニューアルするにあたり、事業者様にどのような車両にしたいかヒアリングをすると、既にリニューアルされている3050系鋼鉄車両の設計内容を継承しつつ、内装は最新の6000系のような内装色としたいと要望がありました。
3050系は1981年から製造されている車両なので、今では当たり前のCAD図面もありませんでした。
また、詳細な仕様検討をするため、事業者様から図面を提出してもらったところ、編成ごとに設計の見直しが実施されており、違いを把握するのに苦労しました。
春口社員:
その違いの中でも車体構体の材質が変更になっているところは驚きました。
今回のリニューアル車両となるアルミ構体車両は、アルミ構体の試作の位置づけであり、編成内に鋼鉄製とアルミ製が混在する編成も存在しているため内装設計時に基本設計は同じで鋼鉄・アルミそれぞれに応じた設計とし、種別分けで対応しました。
清水社員:
リニューアルの対象車両は、客室内に機器が格納されている箇所があり、事業者様の要望に沿ったメンテナンス性の向上などを検討する機会がありました。
こうした経験を通じて設計についての考え方や経験の幅が広がりました。
春口社員:
リニューアルの設計では、各車両の個体差をいかに吸収して対応するかが課題であり、事業者様と打合せを重ね鋼鉄製車両の不具合などを伺いながら設計を深度化し、知恵を絞っています。
西川社員:
ご利用されるお客様が手に触れるところは、怪我を防止するため、丸みをもたせるなど配慮しているので、お怪我防止につなげているので実際に乗ってみて確かめてほしいです。
(3)山陽電気鉄道3000系(3050系)設計の特にやりがいがあったところは?
清水社員:
3050系は12次車までありますが、可能な限りすべての次車に対応できる共有図面にしたところは苦労した点でもありますが、すべての図面に対して、一つ一つ仕様を確認しつつ最終的に1枚の図面に仕上げたところは、かなりやりがいがありました。
春口社員:
事業者様の要望を叶えるために、設計者みんなで一丸となって考え、アイデアを出し合い、協力しながら進めていくのも楽しさの一つだと思います。
西川社員:
やりがいは苦労した分に比例しますね。
春口社員:
可能な限り、部材のユニット化を進め、工事の作業工数を減らすことも考慮しながら設計するので考えることは沢山あり苦労も多いですが、その分設計できた時は嬉しさや、やりがいも大きいです。
西川社員:
同じ3050系で既にリニューアル済の鋼鉄製の車両や5000系のリニューアル、6000系の設計内容を反映することで、事業者様の取扱い等に関して仕様を統一することを考え、材料も共通化することでコストダウンを実現したところが特に印象に残っています。
(4)設計者でよかった!と思うところは?
清水社員:
JR西日本の車両だけでなく、今回の山陽電気鉄道様のように他事業者の設計にも携わることができることです。
また、『WESTEXPRESS銀河』や、『はなあかり』などの観光列車設計にも携わることができることも魅力です。
春口社員:
今ある車両に新たな付加価値をつけ、事業者の方やご利用されるお客様に喜んでもらえるのは、当社の設計者ならではの魅力だと思っています。
西川社員:
自分たちが設計した車両が実際に走るところや乗車できるところは非常に魅力的です。
ご利用されるお客様から『この車両きれいになった!』とお褒めの言葉をいただいたとき、さらには自分の子供にこの車両の設計に関わったと自慢できるところも最高です。
4.まとめ
本記事では山陽電気鉄道3000系(3050系)リニューアルの裏側として実際に設計した人について紹介させていただきました。
JR西日本テクノスの採用情報に関しては、以下のリンク先から確認できます。
★”鉄道専用”SNS「Railil(レイリル)」から取材を受けました!
“鉄道専用”SNS「Railil(レイリル)」の記者 高杉様から取材を受けRaililのコラムで2024年3月8日に掲載されました。
Raililのコラムでは、鉄道会社の垣根を越えた鉄道の様々なアセットについて紹介していますので、ぜひインストールしてみてください。