ホーム検知システムの開発経緯と現在の取り組みをご紹介

2025-09-17

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鉄道の運営において、駅停車時に運転士や車掌が誤ってホームと反対側のドアを開けてしまうことは、お客様が車外に転落する事故につながる大変危険な事象です。
そのような事象を未然に防ぐことができるのが、JR西日本テクノスの主力商品である「ホーム検知システム」です。

今回、ホーム検知システムについて非常に多くの反響をいただきましたので、ホーム検知システムの開発経緯および現在の取り組みについてご紹介します。

ホーム検知システムの製品情報については、こちらよりご覧ください。

※本記事内に記載の役職は、インタビュー当時(2023年度)のものです。


1.ホーム検知システムの開発経緯

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(開発に携わった車両事業部の北野副事業部長)

開発に携わった車両事業部の北野副事業部長から開発経緯について解説してもらいました。

(1)開発経緯について

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(インタビューをうける北野副事業部長)

このホーム検知システムの根幹を支えるのは、超音波センサーの設計です。
超音波センサーはホーム検知の要として欠かせません。その特徴的なホーン形状と周波数について説明します。

この超音波センサーを開発する上で最も重要なことは、地面から垂直方向への広域性でした。
なぜなら、JR西日本のホームの高さは760㎜から1100㎜の範囲に分布するため、1つのシステムでこれらすべてのホームの高さを網羅する必要があったからです。

①超音波センサー単体について

超音波センサーは高い広域性を確保するため、ホーン形状で段差型にするという工夫をしました。
この段差のあるホーン形状にすることで、ホームを広範囲に検知できるようになりました。

次に、超音波センサーが使用する周波数は40kHzという低い領域を採用しました。
理由としては、超音波の指向性を広げやすくするためです。

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(超音波センサーの形状)
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(検知範囲の考え方)

一般的に超音波センサーは100kHz以上の周波数を使います。しかし、100kHzの超音波では、直進性が強く、ホームの高低差に対応するだけの検知範囲を得ることができませんでした。

そこで、ホームの高低差に対応するだけの十分な検知範囲を持っている上に、レールと車輪の軋み音の25kHzに影響されない、40kHzの超音波を周波数帯域として採用しました。

②超音波センサーの送受信について

一般的な超音波センサーは送受信一体型が多いのですが、このホーム検知システムは、車体の揺れやホーム検知側面の凹凸などに影響されないように、超音波を出す方の送信用とホームで反射した超音波を受ける方の受信用で分けるため、2つの超音波センサーがついています。

開発当初の超音波センサーは市販品の送受信一体型を数種類用いて行っていましたが、車体の揺れやホームの形状により超音波が乱反射することで十分な反射波が得られないことがあり、安定してホーム検知が出来ませんでした。

そこで、送信用と受信用に分かれた、専用の超音波センサーの開発を行いました。

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(送信用と受信用に分かれた専用の超音波センサー)
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(性能の確認)

また、超音波センサーはシリコンゴムで成形されており、耐久性と防水性を兼ね備えています。
この素材は塩害にも強く、外部からの汚れにも耐性を持っています。
そのため、様々な路線や環境での運用にも耐えることができます。

③超音波センサーの安定度を増す設計について

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(JR西日本の車両に搭載しているホーム検知システム)

JR西日本に納品しているホーム検知システムの超音波センサーは、2段で計4個取り付けています。

ホーム高さが基本一定である私鉄であれば、超音波センサーは1段で対応できますが、冒頭でも述べた通り、JR西日本のホームの高さは760㎜から1100㎜の範囲に分布するため、1つのシステムですべてのホームの高さに対して安定的に対応できる必要があったからです。

(2)量産への展開について

量産への展開に向けて高度なノイズ対策と耐久性向上に注力しています。

①ノイズ対策

鉄道車両はさまざまな電子機器を搭載しており、電磁干渉が発生しやすい環境です。
そのため、超音波センサーの信頼性を保つために、ノイズ対策が施されています。

②耐久性

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(ホーム検知システムの制御器)

ホーム検知システムを開発する上で、特に意識した点は、筐体(きょうたい)を密閉構造としつつ、排熱対策をしっかりと施したことです。

電子部品は、高温になればなるほど寿命が短くなるため、発熱部品を分散させることで、装置内の温度が高くならないように工夫をしました。

また、半導体などは技術革新が早く、特別な部品を使用すると、その部品の製造が数年後には終了することが頻繁に起こります。そのため、汎用的な部品を多く起用することで、将来メンテナンスができない事態を避けることを心掛けました。

その結果、ホーム検知システムの搭載を始めて約15年になりますが、壊れたことは一度もありません。

2.現在の取り組みについて

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(ホーム検知システムを管理している竹中課長と荒巻さん)

(1)出荷試験

姫路製作所では、出荷試験を行っています。
出荷試験では、すべての車両に合わせて試験できるようにしており、厳しい試験を経て商品として出荷されます。

(2)納品実績

このシステムは、JR西日本であれば、ワンマン車両にはすべて採用されており、さらに225系、227系、323系、DEC700などの多くの列車に現在展開されています。
また、JR西日本グループ外であれば、山陽電気鉄道株式会社、西武鉄道株式会社、京王電鉄鉄道会社、名古屋鉄道株式会社に納品しています。

(3)今後の展望

コスト効率の向上を図った廉価版システムを開発し、より多くの鉄道システムに利用できるように進めていきます。

3.まとめ

本記事では、駅停車時に運転士や車掌が誤ってホームと反対側のドアを開けてしまうことを防ぐ、鉄道の安全性向上に寄与する技術「ホーム検知システム」の開発経緯および現在の取り組みについて解説しました。

この他にも、当社では安全性向上のために、「RFIDを活用した工具管理システム」「先頭車間転落防止ホロ」などの商品も取り扱っています。

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