鉄道車両と動物の接触事故は、未だに鉄道事業者を悩ませています。
そんな方々のために製品化された「獣キャッチャー」。
この獣キャッチャーは、鉄道車両と接触した動物を線路外に移動させるための製品です。獣キャッチャーを使えば、動物に直接手を触れる必要がないので、乗務員の衛生上の問題を解消できます。
この獣キャッチャーに関しましては、過去に当サイトでも紹介させていただいていますが、非常に多くの反響をいただきましたので、本記事では獣キャッチャーの製品化までの経緯および現在について掘り下げて紹介します。
※本記事はJR西日本テクノスが監修しています。
1.獣キャッチャーの概要
JR西日本テクノスが誇る「獣キャッチャー」は、鉄道車両と動物が接触した際に発生する動物除去作業を目的とした製品です。
動物の死骸に輪っかをひっかけ、棒で引っ張ることで、動物の死骸に触れることなく線路外に移動させます。
これにより、衛生的に作業が可能です。
2.製品化の背景
獣キャッチャーの製品化に携わった社員から製品化の背景から現在の取り組みについて解説してもらいました。
獣キャッチャーの製品化の背景には、走行中の鉄道車両と接触した動物の撤去に伴う問題がありました。
JR福知山支所管内においても、毎晩のように鹿との接触が発生しており、動物障害による電車遅延は、年間約1,000件以上も発生していました。
動物障害の度に、乗務員は動物の死骸を取り除く作業が必要となります。
野生の動物に触れる作業はとても危険で、ダニに刺されるなど、乗務員の衛生確保が深刻な課題でした。
3.製品の検討および初導入
これらの課題に対処するために、JR福知山支社から依頼を受けたJR西日本テクノス吹田支店が「獣キャッチャー」製品化の検討を行いました。
製品開発にあってはJR亀山鉄道部(現:かめやま運転区)で使われていた治具(動物を動かす治具)を参考にしました。また、実際に使用する方からの意見などを踏まえて製造を行いました。
特にこだわったのが耐久性です。
鉄道車両と接触する動物には鹿、イノシシ、クマなどが多く、それらの大型な動物を移動するのに十分な耐久力を持たせる必要がありました。
耐久性を追求した結果、獣キャッチャーは大型な動物でも移動できる十分な耐久性を実現しました。
※想定許容重量:160kg
そして製品化された獣キャッチャーはJR福知山電車区所属の車両に搭載され、動物障害時における乗務員の衛生上の問題の解決に貢献しました。
4.現在の状況とまとめ
現在、「獣キャッチャー」は、複数のエリアで使用されています。
また、グループ外では近鉄車両エンジニアリング株式会社様に納品しています。
この製品のおかげで、乗務員の衛生上の問題解決に貢献することができました。
また、その他の効果として、動物との接触後の鉄道車両の遅れの短縮にもつながりました。
これからもJR西日本テクノスは、安心・安全な鉄道車両輸送を提供するために、常に最先端の技術と製品を追求しています。
★”鉄道専用”SNS「Railil(レイリル)」から取材を受けました!
“鉄道専用”SNS「Railil(レイリル)」の記者 高杉様から取材を受けRaililのコラムで2024年1月15日に掲載されました。
取材内容の一部については、関連資料ダウンロードから閲覧可能です。
Raililのコラムでは、鉄道会社の垣根を越えた鉄道の様々なアセットについて紹介していますので、ぜひインストールしてみてください。