2023.11.28

直流母線地絡保護システム(64GP)

7【直流母線地絡保護システム(64gp)】写真③(津田電気計器)

直流電鉄用変電所において直流母線地絡故障が発生した場合に、隣接する変電所の64P不要動作を防止する保護システムです。
接地マットとレール間に放電ギャップ、電流制限抵抗を設置し、帰線用故障選択装置(50N)を追加することで母線地絡を検出します。

1.装置の目的・役割

電鉄用直流変電所において直流母線の地絡を検出して変電所を停電させる保護装置として「直流高圧接地継電器(64P) 」が古くから使われています。一般的に64P は変電所火災といった重大事故を防止する観点から一度動作すると保守員が現地で確認するまでは復電できないので送電再開までに多大な時間を要します。64P は変電所の変電所網状接地極とレール間の電圧レール電位 を監視し、整定値 おおむね500V: 接地極が正・レールが負を超えると動作します。しかし、変電所のレール電位は直流母線地絡やそれ以外に沿線のき電線にアルミ風船のような低抵抗な飛来物が接触した場合、レール・大地間の絶縁が良好な線区では、500V 超のレール電位が数十km の広範囲に伝播します。その際、隣接する複数の変電所の64P が動作(64P 共倒れ現象)して大きな輸送障害となる場合があります。保護システム(64GP)で、このような64P共倒れ現象を防止します。

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2.システム概要

64P共倒れ現象は、図1のようにレールと大地間の絶縁が高い線区で地絡電流が広範囲にわたってレールから吸い上がることによるレール電位の上昇に起因することに着目し、変電所網状接地極とレール間に放電ギャップと微小な抵抗を挿入することを考案しました(図2) 。
本手法を用いると地絡が発生した際、地絡箇所に近い変電所の放電ギャップが放電することによってレール電位を即時に低減して64P 共倒れ現象を解消するとともに、放電電流が微小抵抗に流れる際に発生する電圧で当該変電所の64P のみを動作させることができます。
ところが、このままでは地絡が変電所構内で発生したのか沿線で発生したのかを判別することができません。そこで変電所帰線電流の変化分(ΔI) を監視する帰線用故障選択装置(50N)を設置し、従来から沿線の故障を検出する故障選択装置の各回線(50F11…nn)と図3 のようなアルゴリズムで組み合わせることによって地絡箇所が変電所構内(母線地絡)か沿線にあるかを判別することとしました。たとえば、変電所に近い沿線で地絡が発生した場合、変電所の放電ギャップが放電して、その電流変化により50N 、50F11… nn が動作しますが、50F11… nn が動作しているので即時に沿線地絡と判断して64P の不要動作を回避できます。

3.システム導入による成果

64P共倒れ現象が発生すると、隣接する多数の変電所が同時に停止するため、停電による甚大な輸送障害を引き起こしてきました。本システムの導入により64P の共倒れ現象を回避することが可能となり、列車運行の信頼度が飛躍的に向上します。

4.機器構成

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5.まとめ

本システムは、直流電鉄用変電所において直流母線地絡故障が発生した場合に、隣接する変電所の64P不要動作を防止する保護システムです。隣接する複数の変電所において64Pが同時に動作することでお困りでしたら、ぜひ直流母線地絡保護システム(64GP)をご活用ください!

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