目次
1.日本国内の森林の現状

日本の森林は、国土の3分の2を占めています。
森林は国土の保全や水源の涵養、生物多様性の保全や地球温暖化の防止、木材生産等の多面的な機能をもち、私たちに様々な恩恵をもたらす、まさに「緑の社会資本」です。
国内の森林は500万ha以上(兵庫県6つ分の面積)が利用期を迎え、その蓄積量は約50億㎥に達しています。
平成30(2018)年5月に成立した森林経営管理法を踏まえ、平成31年に森林環境税が制定され、(参考:森林環境税及び森林環境譲与税:林野庁)森林を持続可能な社会資本とするための取り組みが全国で始まっています。こうした取り組みを支えるためには広域の森林資源を効率的に管理するためのシステムが求められています。
さらには、この利用期を迎えた膨大な資源を活かし、林業を成長産業とするために最新の情報通信技術(ICT)を取り入れたスマート林業の時代を迎えています。
スマート林業とは、航空レーザ計測等による広域な森林資源データを収集し、土地所有境界調査まで森林を管理するために必要な基礎情報の整備することから始まります。
そしてクラウドシステムを通じて膨大な基礎情報を活用し、森林計画、森林施業管理、木材流通といった様々な場面において最新技術を導入しながら効率化が進められています。
2.アジア航測のスマート林業への取り組み

アジア航測は、航空レーザ計測等の最新技術により森林資源や地形を計測し、森林・林業に関する様々なお客様からのご相談に答えて提案する、総合コンサルタントです。
特に森林計測の場面では、森林資源を正確に把握することはもとより、詳細な森林資源データをもとに単木レベルの資源解析や伐採時の出材量予測、木材搬出用の路網計画支援まで様々なサービスをご提供しています。
さらに、森林管理や台帳管理、流通の改善を促す総合支援クラウドシステムをご提供しています。
3.アジア航測のスマート林業ソリューション
アジア航測のスマート林業ソリューションをご紹介します。
➊正確な森林資源情報の提供サービス
➋効率的な伐採計画~出材量の算出サービス
➌森林資源情報を駆使した境界明確化サービス
➍安全な作業道確保のための路網計画サービス
❺森林資源情報の総合支援クラウドシステム
今回は「➊正確な森林資源情報の提供サービス」についてご紹介します。
4.アジア航測のスマート林業ソリューションその1
「正確な森林資源情報の提供サービス」
森林資源情報は森林における様々な計画立案の最も基本的な情報です。
アジア航測では航空レーザ計測データから、単木単位での森林の資源量を算出する手法を開発しました。
これにより、従来の航空写真による資源量の把握に比べ、より高精度な資源量の把握が可能となりました。
航空レーザ計測とは
航空機から照射されたレーザパルスが、地物に反射して戻るまでの時間を計測することによって、計測対象の位置と高さを同時に把握しています。
森林では樹冠の表層だけではなく、枝葉の隙間から地表に到達するパルスによって地盤の座標を取得し、樹木の高さ、立木本数、材積等を算出します。

正常な森林と手入れが必要な森林
航空機から照射されたレーザパルスは最初に樹木の表層部(樹冠)に反射します。これをファーストパルスと呼びます。
レーザパルスの一部が樹冠の隙間から林内の低木に反射したパルスが中間パルスです。
さらに地面に到達し反射したパルスがラストパルスになります。
中間パルスが少ない森林は、樹冠部が密になり過ぎて林内に太陽光が届かない状態になっているため間伐など手入れが必要な森林「単層林」です。
一方、中間パルスが多い森林は、樹冠部が適度に空いていて林内にも太陽光が届いているため亜高木層や低木層が発達した正常な森林「複層林」であることがわかります。

樹種判読
レーザパルスが反射した対象物によって強度に違いがでます。これを反射強度と呼びます。
この反射強度の違いを識別して色彩表現した「レーザ林相図」を利用すると樹種の判別ができるようになります。
例えば、航空写真(左図)では太陽光の影地のため樹種判読ができないエリアもレーザ林相図(右図)では影地以外と同様に表現できます。
アジア航測は、レーザ林相図の特許(特許第5592855号)を取得しています。

さらに航空写真では判読が難しいヒノキ林とスギ林であっても明らかに色調の違いがわかるため簡単に樹種判読とエリア区分ができます。

樹木の本数と高さ
森林の立木の本数を算出するための技術として、樹頂点抽出技術があります。
航空レーザ計測データから樹冠の形状を推定し、その樹冠の頂点(樹頂点)を抽出します。
その樹頂点の数から本数、樹頂点と地面との高さから樹高を算出します。
アジア航測は、樹頂点抽出技術の特許(特許第4279894号)を取得しています。

樹木の太さ
さらに樹冠の形状からその面積を算出することで、単木レベルの胸高直径を推定精度2㎝程度のずれの範囲で自動算出することができます。


単木解析(単木単位での森林資源量の算出)
航空レーザ計測データから、以下の森林資源情報を得ることができます。
◆「正常な森林」と「手入れが必要な森林」の区分
◆森林の樹種(林相区分図)
◆樹木の本数
◆単木の高さ(樹高)と太さ(胸高直径)
単木単位のデータを集計・分析することにより、森林の手入れ(間伐)が必要な時期や場所を効率的に正確に把握することができます。
さらに現地調査データから地域性や地形特性、森林の手入れの履歴などを加味することにより精度は向上していきます。
森林管理のお困り事は、アジア航測の「正確な森林資源情報の提供サービス」で解決いたします。
次回はアジア航測のスマート林業ソリューションその2
「効率的な伐採計画~出材量の算出サービス」についてご紹介する予定です。