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2023.07.12

鉄道指令業務(運転整理)アシスタントAIの共同開発について

運転指令所

 自然災害や線路や車両設備のトラブルなどの外的要因により列車のダイヤが乱れた場合、復旧に向けて各列車の運行を指示する「運行指令業務」について、AI技術を活用し最適な運行配置を自動提案するソリューションを開発しています。

1.開発の背景

 列車ダイヤが乱れた際には、「どの列車を優先的に運行させるべきか」を指令員が自身の経験に基づいて判断しなければなりません。輸送計画や運転整理を行う担当者には高度な知識とスキルが求められ、個人の能力や経験によりダイヤ復旧に差が生じておりました。

 また、ダイヤ乱れが発生した際には、現場からの問い合わせ電話や無線への対応、情報共有等に追われ、指令員の負担が非常に大きいことが課題としてありました。

 そこで、指令業務でも負担の大きい輸送計画・運転整理をAIに置換えることで指令員の負担を軽減しつつ、輸送計画・運転整理者の能力差によるアウトプットのばらつきを縮小し、ダイヤ復旧の質を向上するべく、開発に取り組む運びとなりました。

運転指令所
JR西日本の運転指令所

2.開発の概要

 輸送計画をモデル化した実践的なAIを構築し、用途に応じたAIを展開することを目指します。本開発では「デジタルクローン技術(P.A.I)」を持つ株式会社オルツ(https://alt.ai/)と協力し、指令員の経験値をAIで再現することで、ベテラン指令員と同等の判断ができるシステムを構築します。

 2021年度より開始したPhase.1では、仮想線区における輸送計画をモデル化し、ダイヤ乱れが発生した際の指令員の運転整理案とAIが提案した解を比較しました。数十事例について検証した結果、指令員と同等もしくはそれ以上の結果をPhase.1で構築したAIモデルから出力できることがわかりました。また、指令員が行う運転整理の考え方にとらわれない輸送計画を本ソリューションで確認することができました。

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左図:指令員の解 右図:AIの解

 2022年度より開始したPhase.2では、JR西日本管内の実在する線区・実在するダイヤのデータを用いて、列車の運行乱れが発生した際に自動で運転整理を行うためのAI学習モデルを検証してきました。Phase.1で構築したAIモデルに指令員のノウハウを学習させてチューニングを行い、指令員の運転整理手法と同等の出力解をAIから得ることができました。

 2023年度より開始したPhase.3では、Phase.2の結果を踏まえて本モデルが輸送指令員の運転整理を支援できる有用なソリューションとなる見込みが立ったため検証フェーズから製品開発フェーズに移行し、JR西日本主導のもとオルツとの共同開発を更に加速させていくことになりました。Phase.3以降では構築したAIモデルのチューニングを行うことでAIの出力解の精度を高めていくとともに、まずはスタンドアロンAIとして実線区で使用できるようなUIの設計や新たな機能の追加を行う予定です。本製品が実現すれば、オルツの持つP.A.I(パーソナル人工知能)※1を組み合わせたベテラン指令員の運転整理再現が可能となれば更なるダイヤ復旧の質向上が実現します。

 将来的には、オルツと開発した技術を社会実装していくことで、JR西日本エリア内にとどまらず、他交通事業者の課題解決にも貢献したいと考えております。

3.目指す姿

  JR西日本グループは様々なパートナーと共に、安全・安心・信頼できる鉄道サービスを通じた便利で豊かな暮らしをお客様に提供します。オルツとの共同開発により、AIによる運転整理支援ソリューションが実現すれば、経験年数等の違いによる能力差によって生じる運転整理案のバラつきを縮小し、列車遅延によるお客様への影響を最小限にとどめることができます。このような取り組みを通じて、お客様に提供するサービス品質の向上に貢献して参ります。

 また、当社で働く社員がいきいきと活躍できる職場の提供を実現して参ります。デジタル技術を活用した新たなソリューションの導入により、鉄道運行オペレーションの中枢を担う指令所を含めて日々の業務プロセスを変革し、鉄道事業の生産性向上と持続可能な交通システムの未来を実現することで、社員一人ひとりが働きがいと成長を実感できる活力のある職場づくりに取り組みます。

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4.まとめ

 JR西日本イノベーションズでは本記事でご紹介したAI技術領域の他にも、ベンチャー企業様や他の企業様と協業し、ドローンやロボットといった最新技術と鉄道の技術を掛け合わせ、既存事業における生産性向上や、新規事業の立ち上げによる収益の拡大等、様々な取り組みを行っておりますので、弊社事業にご興味・ご関心をお持ちいただいた企業様がおりましたら、お気軽にお問い合わせください。

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